不満である項目全てに対策をとることは中々できません。 本来なら全てに対策を取れれば良いのですが、費用や時間など問題もあり不可能です。 そこで必要になるのが、重点化、つまり重み付けです。
重み付けを統計的に算出するには、相関係数を用います。
相関係数を理解するのために、「社員旅行についてのアンケート」を例に考えてみたいと思います。
例:社員旅行についてのアンケート
過去に実施した社員旅行について調査したい場合
総合的な質問として
・私は、社員旅行について満足している
総合的な質問の要因についての質問
1. 私は、(社員旅行の)「観光地」について満足している
2. 私は、(社員旅行の)「旅費の自己負担」について満足している
3. 私は、(社員旅行の)「宿泊の快適性」について満足している
4. 私は、(社員旅行の)「食事の内容」について満足している
回答の選択肢
5: 非常にそう思う
4: そう思う
3: どちらともいえない
2: そう思わない
1: 全くそう思わない
このアンケート調査結果を縦軸に「社員旅行の満足度」、横軸に「各質問項目の満足度」とって、下のようにグラフにプロッド(点であらわすこと)してみます。これを相関図といいます。
相関係数とは、2つの変数の間で、一方が増加するにつれて、他方が直線的に増加、または減少する関係をあらわした指標です。
相関係数は、Microsoft Excel でも関数が用意されています。(CORREL 2つの配列の相関係数をかえします。)
A:「観光地」と社員旅行の満足度
グラフA(相関係数 = 1)
「観光地」の満足度が高まるにつれて、社員旅行の満足度も増加しています。
(正の)相関関係は非常に強い状態です。
つまり、社員旅行の満足度の要因として、非常に重要な要因であるといえます。
B:「旅費の自己負担」と社員旅行の満足度
グラフB(相関係数 = -0.7)
「旅費の自己負担」の満足度が高まるにつれて、社員旅行の満足度が減少しています。
(負の)相関関係が強い状態です。
つまり、社員旅行の不満足度の要因として、非常に重要な要因であるといえます。
C:「宿泊の快適性」と社員旅行の満足度
グラフC・D(相関係数 = -0)
「宿泊の快適性」の満足度は、社員旅行の満足度に相関関係が見られない状態です。
つまり、社員旅行の満足度の要因として、重要な要因ではないといえます。
D:「食事の内容」と社員旅行の満足度
グラフD(相関係数 = -0)
「食事の内容」の満足度は、社員旅行の満足度に相関関係が見られない状態です。
つまり、社員旅行の満足度の要因として、重要な要因ではないといえます。
このように、相関関係を見ることによって、満足度の重要な要因を見つけることができます。この相関関係の強さを相関係数といって、計算式を使って算出することができます。
相関係数がプラスの場合は正相関、マイナスの場合は逆相関と言い、その絶対値が1に近い場合は相関が高く、0に近い場合は低くなります。
上ではグラフDにおいて、相関関係が見られないといいましたが、もう少し詳しく見てみましょう。
回答者の年齢を30歳以上と30歳未満とに色づけをしてみると右のようになりました。
次に下のように30歳以上と30歳未満とに分解してみたところグラフE:30歳以上では、(正の)相関関係があらたにみつかりました。
以上のように、社員旅行の満足度の重要な要因は、「観光地」と30歳以上では「食事の内容」であることが判明いたしました。
この例では、社員旅行でしたが、重要な満足度の要因を分析する方法が、おわかりいただけたものと思います。 さらに、質問する項目を4つの象限に分けて(ポートフォリオ分析)分析すると何に対策を打てばよいかを導き出すことができます。
縦軸に満足度、横軸に相関係数により算出した重要度で、それぞれの項目を分類いたしますと下のようになり、重点的に改善しなければならない項目が明確になります。
重点改善項目
重要な満足要因で、しかも不満足の項目。 したがって、最優先で改善に向けた活動が必要になります。
重点維持項目
重要な満足要因で、しかも満足度が高い項目。 会社の強みとして、維持強化を図ることが必要です。
維持項目
重要度が低く、満足している項目であり、維持していくことが必要です。
ウォッチ項目
満足度が低いですが、社員にとって重要でない項目。 改善の優先順位は低いです。